2021.03.23

考えていますか? あなたの会社の「事業承継」

「そろそろ引退したいが、適当な後継者がいない」

「子供に経営を継いでもらいたいが、意思(または経験)がない」

「会社の赤字経営が続き、廃業しようかと考えている」

「時代が変わり、事業に将来性が見込めない」

「このご時世、自分の代までと考えていた」

「そもそも子どもがいない」

「事業承継いついて考えたこともなかった」

 

60代から70代の中小企業の経営者に、自分の後継者について尋ねると、上述のようなご意見を伺うことは珍しくありません。それもそのはず、日本はこれから超高齢化社会を迎えるからです。戦後のベビーブームにあたる団塊の世代(1947年[昭和22]-1949年[昭和24])は2020年には70歳以上になります。そして国の試算によると今後10年で全国約127万の企業において後継者がおらず、事業を継続するには後継者を探すか、または引受先を探さなければならないという課題を抱えることになるのです。まさに事業承継は日本が早急に取り組まなければならない大命題なのです。

とはいえ「自分はまだ現役バリバリだから、承継問題は無関係」「事業承継といっても何をしたら良いのだろう」「難しそう」と事業承継について考えてしまう中小企業の経営者も多いのではないだでしょうか? しかし思い悩む必要はありません。どの企業にとってもいつかは訪れる事業承継について、今から準備していけば良いのです。

団塊の世代の出生数と比較(厚生労働省の「人口動態統計」より)

中小企業の経営者年齢の分布

事業承継は政府や都が対策を打ち出す肝入りプロジェクト

冒頭で陳述したように、多くの中小企業が今のうちから事業承継について準備を始めておくことは大切です。そして事業承継について考え後継者が決まっていない企業にとって、今がチャンスと考えられるのです。もし中小企業の後継者が決まらないとなると、長年にわたり培われた技術、ノウハウ、人材、取引先とのつながりなど、多くのものが失われることになります。会社が倒産・休廃業するなら、そこで働く従業員の雇用も失われることになるのです。たちまち多くの企業が倒産・休廃業に追い込まれ、今後10年で約22兆円のGDPを失うことになります。このまま放置すれば日本経済にとってそれは大打撃ですから、政府も地方行政も積極的な支援を打ち出しているというわけです。

政府が打ち出す支援の一つは「事業承継税制」の大幅拡充(2018年1月1日から2027年12月31日まで)です。従来の「事業承継税制」に特別措置が創設され、利用しやすい環境となりました。具体的に主に次のように変わりました。

  • 事業承継の際の贈与税・相続税の現金負担がゼロになります。これまでは株式の3分の2が猶予割合でしたが、全額に拡大されます。 
  • 事業承継後5年間の平均で雇用の8割を維持するというこれまでの要件を実質撤廃し、要件が満たせなかった場合も納税猶予されます。但し認定支援機関での指導助言が必要な場合もあります。 
  • これまで1人の経営者から1人の後継者(1対1)に承継されることで納税猶予されていましたが、複数の株主から複数(最大3人)の後継者への相続・贈与されても納税猶予を受けることができます。

中小企業の事業承継について考えている経営者や後継者にとって、こうした支援を活用するなら大変メリットのある10年間なのです。しかし、せっかくこうした優遇措置があっても活用しなければ意味がありません。どの会社でもいつかは必ず訪れる承継問題。優遇制度があるうちに会社の今後の行く末について考慮しておくことは賢い選択肢の一つではないでしょうか?

最適な事業承継とは何か? 賢い承継方法を選択しよう

事業承継の選択肢はいくつか存在します。まずは後継者を誰にするのか考える必要があり、選択肢によって承継方法も変わってきます。最適な後継者をどのように選んでいけるでしょうか?

1.親族内承継

後継者選びの筆頭候補としてあげられるのは現経営者の親族に承継させる親族内承継です。日本では一般的に子どもに承継させるというケースをイメージされますが、配偶者、兄弟、娘婿、孫、甥などの経営者の親族に承継させるということも珍しくありません。親族の中から後継者を選ぶことにはメリットがあります。日本では「子どもが継ぐ」という考え方がまだまだ根強いので、親族、従業員、取引先に理解を得やすいのです。周りの人の理解が得やすくなれば事業承継のための準備期間の確保も容易になります。

一方で「子どもが継ぐから大丈夫」「長男が家業を継ぐのが当たり前」と自動的に経営者の子ども継ぐという安易な考え方はトラブルになることもあります。現在は承継の考え方、働き方も様々ですから、親族の後継者候補が承継を考えていないということもあるのです。

例えば、一般企業に勤めている自分の子どもが何年かしたら家業を継ぐために戻ってくると当然のように考えていましたが、子どもに承継の意思がなかったということがあります。経営者が後継者を決めずに不慮の事故で突然に亡くなってしまい、株式が経営者の数人の子どもたちに相続され、分散されたことにより会社の経営が立ち行かなくなってしまったということもあります。経営者が自分の子どもに当然のように承継させたために、後継者に事業に対する適性や意欲がなく、役員・従業員が会社を離れてしまうということもあります。

親族内で事業承継するとしても会社や家族が離散しないために、後継者候補を早めに選定し、当人の承継意思を確認し、計画を立てることが大切なプロセスです。

「進んでいますか? あなたの会社の後継者育成」の記事はこちらから

2.役員・従業員承継

親族内に適当な後継者が見つからなかった場合に、既存の役員や従業員から後継者候補を選定することもできます。役員や従業員であれば、共に会社の経営・業務に携わり、スキルやノウハウを持ち合わせ、取引先との関係も良好で、後継者として最も適任だと考えるわけです。こうしたメリットがある一方で役員・従業員承継にもいくつかのハードルもあります。

子どもであれば株式の贈与や相続という考え方がありますが、親族以外の役員・従業員に会社の株式や事業用資産を引き継ぐのは簡単ではありません。後継者となる役員・従業員が会社の株式を経営権が分散しない程度にまで買い取る資金力をもっているかどうかということが問題になります。本来は経営と所有は分離してもよいというのが一般的な考え方ですが、非上場の中小企業の場合、分離してしまうことで経営者が株主の様子を伺い、会社として思い切った経営手腕を振るえなくなってしまい、健全な経営が失われてしまうということがあるのです。別の問題として、会社に債務がある場合、経営者になることによって経営者保証を負うという理解を後継者やその家族から得られないということもあります。保証まで引き受けて経営者になりたいと思わない役員・従業員は多いため、債務が有る限り、現経営者はなかなか事業承継できない場合もあります。

役員・従業員への事業承継を考える際に、こうした問題をクリアするための準備が大切になってきます。

3.M&A(企業・事業の合併や買収)

親族、役員、従業員に事業承継できる適切な候補者が見つからない場合、M&A(企業・事業の合併や買収)という方法で事業承継を考えることもできます。日本では敵対的買収がメディアなどで報じられることもあり、自分が手塩に掛けて育ててきた会社を売るということに抵抗感を感じる経営者も少なくありません。しかし、中小企業におけるM&Aでは、培われてきた技術、ノウハウ、現経営者の意向を残し、社風を重じる友好的な買収が行われることが多いのです。また現経営者は株式譲渡による売却利益が得られ、従業員の雇用を守れるので、安心して引退できるというメリットもあります。

一方で、当然ながら売り手にあたる現経営者と買い手の後継者との意向がマッチしていなければなりません。買い手側は買収によって得られる明確なメリットがあるので買収します。事業そのものに将来性がなく、多額の債務がある場合などで企業価値が見出せない場合に成立は難しくなります。

M&Aでの事業承継を考えるならば、今から企業・事業の魅力や将来性を高め、経営状態の健全化に努めることにより、企業としての価値を上げることが必要になるでしょう。

最適な事業承継を選択するためのフローチャート

誰にでも、そして何時かは訪れる事業承継

このように事業承継にはいくつかの選択肢があり、企業の状況によって最適な承継方法は異なってきます。どの方法であっても、直ちに承継できるわけではなく、数年の引き継ぎ期間が必要になります。誰にでも、何時かは訪れる事業承継。この機会に自分たちの会社にとって最適な事業承継とは何かを真剣に考えてみるのはいかがでしょうか。

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(C)2019 公益財団法人東京都中小企業振興公社 all rights reserved.
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