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2022.09.08 豊富な事例に基づいたアドバイスが、迷う背中を押してくれた

エタニ電機株式会社  会長 日野 君子 / 社長 鈴木 隆志

エタニ電機株式会社は1974年創業。高度な技術を持つ音響測定器メーカーとして、国内外の音響メーカーと取引を行ってきた。2018年に創業者が急逝。経理やお客様対応を担当していた配偶者の日野君子氏(現会長)が代表に就任。年齢的な面から2年以内の承継を目指した。ただし、「夫が亡くなる5年前から厳しい経営状況が続いていた」と話す。公社とは30年来の交流があり、事業承継のセミナーに参加した後、個別相談を申し込んだという。

Q.事業の内容を詳しく教えてください

鈴木隆志社長(以下、鈴木):音響測定器やデジタル信号処理装置を中心に、「音」に関する技術を扱っています。音響測定器は、音響機器を製造する際に必要不可欠な機器ですが、高度な技術が要求される割にマーケットが小さく、国内の競合はほとんどありません。そのため、日本の大手音響機器メーカー様全てとお取引があります。
デジタル信号処理装置はDSP(デジタル信号処理技術)を使った各種音響装置で、カーオーディオなどの音質を向上させるために使用します。その他、建築設計における音響効果や機械の作動音など、音に関する事業への技術コンサルティングも手がけています。音響測定の技術はさまざまな分野で必要とされており、「音」という見えないものを可視化する当社の技術に関心を寄せてくださる企業は少なくありません。

Q.公社に事業承継に関する相談をする前の経営状況を教えてください

日野君子会長(以下、日野):2018年に創業者である夫・日野捷吉郎が亡くなり、私が社長に就任しました。夫は根っからの技術者で、将来の後継者より目の前の開発に夢中な性質。亡くなる前日まで仕事に打ち込んでいました。
私は以前から経理やお客様対応を担当していましたが、技術に関しては全くの素人。社員は、全員技術者としては一流ですが、経営を任せられる人材はいませんでした。高度な技術を持っていても、経営者が方向性を示せないと事業は停滞してしまいます。
また、夫が亡くなる5年前から赤字が続いており、日野家からの負債が増えていました。銀行からの借り入れはなかったので、いざとなったら会社を解散することも考えましたが、従業員とお客様が心配でした。また、日本で唯一の技術を持つ企業ですから、なくなったら困るお客様がたくさんいるのです。

代表取締役社長の鈴木隆志氏は、2019年7月に企画部長として入社。大手音響機器メーカーに勤務していた同氏に、後継者の第一候補として白羽の矢を立てたのは当時の日野君子社長だった。

Q.公社に相談した経緯を教えてください

日野:公社とは、もう30年以上のお付き合いになります。助成金や講習会、協力会社の紹介など、色々とお世話になっていました。会社を解散するか、社外から後継者を探すかで迷っていた時に、メールマガジンで事業承継のセミナーがあることを知り、参加後に個別相談を申し込みました。
その後、公社の担当者が数回来社。経営状況や後継者に求めることをヒアリングし、類似したケースを例示していただきました。多くの判断材料をいただきましたが、最後に決めるのは自分自身。後継者獲得のために自分で動くしかないと覚悟が決まりました。公社に背中を押していただいた感じですね。
今まで仕事で関わった方や、人材会社に紹介された方など数名の候補が浮上しました。中でも当時大手音響機器メーカーに勤務していた鈴木さんは第一候補。お仕事で関わったのは十数年前の一度きりですが、商談の際にも鋭い質問をパッパッと投げてきて、「この人やるな」と思っていました。

鈴木:当時からエタニ電機は技術志向の強い企業という印象で、その商談の際にも技術者が2名同席し、最初から専門的な話ができたのを覚えています。先代の捷吉郎氏とはその後もイベントでご一緒したり、食事に誘っていただいたりと交流が続いていました。
或る日、日野会長から「後継者に」というお話をいただきました。当時、勤務先の企業でも希望退職者を募っており、年齢的にも活躍の場が先細りしていくのが見えていた時期。エタニ電機の事業や技術については全く知りませんでしたが、一度しか仕事の接点がなかった自分を覚えていてくれたことが嬉しくて、できるかどうか考える前に「引き受けたい」と感じたのです。
その後、2019年7月に企画部長として入社しました。9月からは公社の事業承継塾を受講。前職でマネジメントを担当していたので財務や経営の基礎知識はありましたが、今まで学んできたことを確認しながら、改めて自社を理解する機会となりました。一緒に受講した十数名とは仲間意識が生まれ、その後も交流が続いています。

Q.事業承継の後、会社はどのように変化しましたか?

鈴木:2020年に社長に就任。2021年度の売上は倍増しました。私の力というより、今までエタニ電機が培ってきた技術力に着目したお客様からオファーをいただいた結果です。前職でOEMの顧客対応も経験していたので、お客様が何を求めているのか、自社の技術でどう実現するのかというノウハウは役に立ちました。

日野:いくら技術を持っていても、それをお客様に伝えて、さらにお客様に合うようカスタマイズできないと売上にはなりません。私にはできないことなので、鈴木さんには本当に感謝しています。

代表取締役社長に就任した。前職でマネジメントやOEMの顧客担当をしていたことから、事業を顧客目線で考えることに長けており、財務や経営の基礎知識も持っていた。同氏が承継した後、経営状況はV字回復している。

鈴木:事業承継塾で教わった収益管理ツールも役に立っています。当社の製品は高価ですが耐久性に優れているため、毎月コンスタントに販売できるわけではありません。しかし、ツールを活用して月次での収益管理を徹底し、その内容を社員に共有したことで意識が変わりました。今月の売上が足りなければ来月の仕事を前倒しにしよう、月末に入った仕事も終わらせよう、という姿勢が出てきて、それが売上にも表れてきたのです。

Q.今後の展望をお聞かせください

日野:鈴木さんに社長就任をお願いする際、私が5年間財務を担当することをお約束しました。あれから1年半経って、今後は私の業務をどう引き継いでいくかが課題となります。また、社員の高齢化による技術の継承も今後の課題です。今まで培ってきた人脈を活かし、社外の協力者を増やしていきたいと考えています。

鈴木:現在はお客様に恵まれていますが、事業の柱はまだまだ不安定。人材リソースの面とともに、売上面でも強化を図っていく必要があります。

日野:社名の「エタニ」は「Eternity(永久)」から取っています。永久とは行かないまでも、できるだけ長く創業者の遺志と技術を引き継いでいってほしいですね。

エタニ電機株式会社は、主に様々な音響用測定機とデジタル信号処理装置の開発・製造を行っている。

事業内容 音響用測定機とデジタル信号処理装置の開発・製造
創業 1973年4月
資本金 1,200万円
住所 東京都大田区大森本町1-10-15

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