2021.03.24

進んでいますか? あなたの会社の後継者育成

「俺がいなければ話がまとまらない」

あなたはこれまで現場でも、取引先との交渉でも、経営者としての豪腕を奮ってきました。今の会社を一代で築き、いざとなったら頼りになるレジェンドとして従業員からの厚い信頼も得ています。そんな絶対的な経営者であるあなたは創業からがむしゃらに走り続け、気づけばもう60歳です。まだバリバリ働ける、引退は先のこととあなたは考えるかもしれません。しかしここで考慮すべき重要な要素は経営者の引退は平均68歳から69歳で事業承継には10年ほどの期間を要するということです。(「何をする? 事業承継の要素と課題点」の記事はこちらから(←記事へリンク))つまりあなたが仮に60歳から事業承継の準備を始めても、承継が完了するのは70歳になった時なのです。その間に不慮の事故や病に合わないという保証もありません。あなたが元気な今こそ、事業承継について真剣に考える必要があるのです。

あなたの息子が承継する意思を示している場合はどうでしょうか? 後継者が決まっているのだから安心だと考えるでしょうか? しかしこれまで経営に関しては息子と真剣に話し合うという機会がなかったかもしれません。一従業員として入社したものの、他の従業員との微妙な関係が会社の雰囲気に影響を与えているということもあります。経営者であるあなたと同じようにリーダーシップを取れるとも限りません。スムーズな事業承継を行うために後継者をどのように育成していけるのか、この記事では経営者の息子が事業承継するというケースで考えてみましょう。

経営者直属の教育

経営者の息子という立場で入社すると、会社には幼少期からよく知っている従業員もいれば、息子よりも経験豊富な職人たちもいることでしょう。そうした中で従業員の部下として後継者候補の息子を傘下に置き教育させていくことは現場の経験を積み、業務内容を把握するという意味では良いのですが、一方で会社の中で師弟関係が生まれ、経営者になったときに遠慮してしまい、必要な経営改善が行えなくなってしまうという事態も懸念されます。そうならないために経営者自身が直接指導するというのも一つの手段です。どの方法でも経営者と後継者がお互いの考え方や思想を話し合い、会社の経営理念や将来像を共有することは大切です。これまでのノウハウを引き継ぎ、経営の現状を分析する上でも役立つでしょう。

会社での立場

 

会社の中での立場を与えて教育していくこともできます。例えば後継者に経営者直轄の部署での役職を与え、従業員と相談できるポジションで経営に携われるようにしてあげることもできます。営業を任せて取引先や顧客のニーズについて客観的に見る機会を与え、商品力改善を目指すというのも良いでしょう。または生産現場に経営者直属のセクションを一つ設けて、現場と同じ目線で働くことで徐々に信頼を勝ち得るという方法もあるでしょう。色々な部署を経験することで従業員との良好な関係を構築しながら会社の構造を理解できるようにもなります。役職を順番に経験すると、役職ごとに求められる役割や権限を理解できるようにもなります。各ポジションをある程度の期間、経験した後に役員へと昇格させ、実態を理解した経営者へと教育していくことができるでしょう。

結果を出す

こうした会社でのポジションは後継者に自覚と責任感を与えることにもなります。特に最初は後継者が得意とする分野で働き、結果を出しやすくしましょう。それは後継者に更に自信を与え、他の従業員からの指示も得やすくなるでしょう。経営者一族としての立場ゆえに後継者として認めるということから、結果に裏付けされた後継者としての信頼を勝ち得ることになるのです。

他社での経験

会社の規模によっても異なりますが、他社での勤務を経験することも役立ちます。同業種、同規模の会社や顧客企業ならば客観的な視点でのアイデアを学べるでしょう。100人以上の会社ならば更に大きな企業で働くことでノウハウを習得することもできます。経営者一族とは関係ない会社に身を置くことで、社会人としての経験やマナーを学びます。他社で働くことで、将来、困ったときの相談相手や実際的な援助を受けられる人脈を広げることもできるのです。

事業承継のセミナーや塾の活用

国、東京都、その地域の商工会などでは事業承継のためのセミナーや塾などを開催し、経営改善、財務会計、法律、労働管理などの基本的なことを習得できます。加えて後継者と同じような境遇を持つ、言わば同士とのコミュニケーションによって課題や悩みを共有することもできます。意外にもこのアドバンテージは大きく、事実、セミナーに参加した人の多くは「自分と同じような境遇の人と悩みを相談できたことが利点」と答えているのです。後継者としての孤立感や不安を払拭するのに、セミナーや塾を介して得た仲間が助けになるということもあるのです。

経営者のバックアップ

経営者は後継者の対応の仕方を見て、もどかしい思いをすることもあるでしょう。自分が一喝すれば済むと思い、従業員との間に割って入ろうとさえ考えるかもしれません。一方で後継者の望むようにやらせて、自分は関与しないという場合もあります。しかしどの方法でも事業承継は上手く進まないこともあります。経営者として後継者に寄り添い、やる気を育てるようにしましょう。後継者を信頼し、その行動を承認し続けることでバックアップできます。

後継者育成のポイント

事業承継計画の策定

 

後継者が経営者としての素質を持っていることがわかったなら、円滑な事業承継を行うために事業承継計画書を作成することは大切です。この計画書によって経営者も後継者も課題を意識し、話し合いによって定められた結果を計画書に盛り込んでいくことができます。経営者と後継者の認識だけでなく親族や従業員も会社がどのようの方向性に向かっているのかを意識することができます。顧客や取引先からの理解と信頼も得やすくなるでしょう。政府が10年間の事業承継対策として打ち出している事業承継税制の特例措置もこの事業承継計画の一部を盛り込んだ特例承継計画を策定することで受けられます。

 

事業承継の基本方針をまとめる。

現経営者:公社太郎

後継者:長男一郎

承継方法:親族内承継

承継時期:5年目に社長を交代(代表権を一郎に譲る)

 

会社の中長期計画をまとめる

売上高:8億円【現在】→ 9億円【5年目】→ 12億円【10年目】

経営利益:3千万円【現在】→ 3千5百万円【5年目】→ 5千万円【【10年目】

 

会社の種類株式、定款、元経営者の退職金に関する指針をまとめる

親族保有株式を配当優先株式へ【1年目】

黄金株(拒否権付株式)の発行【5年目】

会社による黄金株の買取【8年目】

 

※種類株式とは、普通株式とは権利が異なる株式のことで、黄金株もその一つです。黄金株は株主総会や取締役会での決議事項、例えば取締役の選任や解任、事業の譲渡や合併などの決議事項に関して一定の拒否権を持つように設計された種類株式と言えます。事業承継が完全に終わるまで現経営者が後継者への一定の歯止めを掛けることができ、現経営者の意思に反した役員の組織改革や事業の譲渡などを防ぐことができます。一方で黄金株を保有している元経営者が会社の利益に反して拒否権を行使するなら会社の経営を阻害してしまうということも考えられますから、発行の段階で、ある一定期間経過後に会社が強制的に黄金株を買い取ることができるということ条項に定めるのが一般的です。

現経営者のスケジュールをまとめる

役職:社長【現在】→ 会長【5年目】→ 相談役【8年目】→ 引退【10年目】

関係者の理解

家族会議で後継者の決定【現在】→役員・従業員へ後継者を公表し計画を発表【1年目】→取引先や金融機関へ後継者について告知【3年目】→役員の刷新【5年目】

持ち株比率や財産分配

70%【現在】→ 65%【1年目】→ 60%【2年目】→ 55%【3年目】→ 50%【4年目】→ 0%【5年目】

公正証書、遺言の作成【5年目】

後継者のスケジュールをまとめる

役職:取締役【1年目】→ 専務【3年目】→ 社長【5年目】

後継者教育(社内)

工場【現在】→ 営業部【1-2年目】→ 本社管理部【3-4年目】 

後継者教育(社外)

公的機関や商工会などのセミナーを受講【現在】

事業承継塾への参加【1年目】

持ち株比率や財産分配

0%【現在】→ 5%【1年目】→ 10%【2年目】→ 15%【3年目】→ 20%【4年目】→ 70%【5年目】

「事業承継のすゝめ」に基づいた数値にいたしました。

 

事業承継計画表の記入例(中小企業庁「事業承継ガイドライン」より加工)

早くて損はない、事業承継のための準備と教育

事業承継の準備、後継者の教育、それに関係する社内外の理解を得るにはかなりの期間を要するということをご理解いただけたと思います。この記事で紹介したことは事業承継の入り口に過ぎず、事業承継計画に基づいた経営や課題への取り組みは長期間続いていくことになります。公社では後継者教育のためのセミナーや、専門家を交えた事業承継計画の策定などのサポートも無料で行なっております。事業承継をお考えの中小企業の皆様は公社にて一度、ご相談いただければと思っております。

 

(C)2019 公益財団法人東京都中小企業振興公社 all rights reserved.
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