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2022.05.09 中小企業における後継者問題
中小企業における後継者問題
日本企業の99.7%を占める中小企業。地域社会の経済や雇用を支えている重要な存在ですが、近年は経営者の高齢化と、それに伴う事業承継が大きな課題となっています。
日本社会全体の高齢化に比例して、経営者の平均年齢も上がり続けています。2020年の経営者平均年齢は62.49歳(東京商工リサーチ)。5年から10年以内には世代交代という年齢です。ところが、代表が高齢になっても後継者が決まらず、最終的には廃業を選択する企業が少なくありません。日本政策金融公庫の調査によると、60歳以上の経営者のうち半分以上が将来的な廃業を予定。うち3割が「後継者難」を廃業の理由に挙げています。(2021年、帝国データバンク)
業績が黒字のまま廃業する企業は増加傾向にあり、昨今はコロナ禍による業績悪化で事業継続を断念する企業も増えています。このままでは、中小企業が減少し、経済に大きな影響を与えかねません。
行政による支援
こうした状況のもと、中小企業の廃業回避策として、行政による事業承継支援に注目が集まっています。2017年7月、中小企業庁は事業承継を集中的に支援する「事業承継5ヵ年計画」を打ち出しました。さらに中小企業の経営資源引継ぎを後押しする「事業承継補助金」、経営・幹部人材の派遣、M&Aマッチング支援など、さまざまな事業承継支援が進められています。
近年の傾向
行政の各種支援策が功を奏し、全国企業の後継者不在率は緩やかに低下してきました。2021年の帝国データバンクによる調査では、全国企業の後継者不在率は61.5%。2020年の不在率65.1%から大きく改善され、調査を開始した2011年以降で最低となりました。しかし、コロナ禍の業績悪化に対応するため、後継者問題を先送りにする企業も。特に代表が50代の企業では、後継者不在率70.2%と2021年より増加する結果となりました。代表が80代以上の企業では後継者不在率29.4%と大きく減少しましたが、それでも3割近い企業の後継者が決まっていないのは今後の課題となるでしょう。
後継者の就任経緯を見ると、同族承継の割合が38.8%も最も高いものの、2017年の41.6%から緩やかな減少傾向にあります。同族承継の中でも、経営者の子どもが事業を承継する割合は低下しているのです。変わってM&Aが微増しており、少しずつですが「脱ファミリー」の動きが見られます。
社会状況が急激に変化する中、改めて自社の存続と後継者問題に向き合った企業も少なくありません。今後も行政主導の事業承継支援が継続されれば、企業の意識も高まり後継者不在率は改善されていく見込みです。他方、後継候補の育成などの具体的な事業承継計画を進めていながら、コロナ禍による業績悪化や後継候補者の退社、または現経営者の体調悪化、死亡などにより事業を継続できなくなった「後継者難倒産」も発生しています。また、後継者の資質不足や引継ぎ準備不足により、事業承継後に経営が行き詰まる例もあります。事業承継には5年・10年単位の計画が必要なため、途中で状況が急変した場合の対応にも時間がかかるのです。こうした影響は資金力や人材に乏しい中小企業ほど大きく、廃業へのリスクを高める要因ともなるでしょう。
関連コラム
これから事業承継を考えたいという方、あるいは「後継者なんてまだ早い」とお考えの方も、こちらのコラムをぜひご覧ください。早い段階からの事業承継計画がなぜ必要なのか、具体的には何をすべきなのかがお分かりいただけるでしょう。
「進んでいますか? あなたの会社の後継者育成」
https://shoukei.tokyo/column/185/
公社による支援と、その他の相談先
東京都中小企業振興公社では、事業承継に関する様々な支援を手がけています。豊富な支援経験を有する専門スタッフが、会社ごとの状況に合わせた事業承継・経営改善を無料で支援。後継者がいない場合の事業承継の進め方についても、まずは公社にご相談ください。
また、国の設けた公的相談窓口である「事業承継・引継ぎ支援センター」(https://shoukei.smrj.go.jp/)でも相談を受け付けています。