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事例3

株式会社やのまん

営業活動の「見える化」で、
巣ごもり需要のチャンスをつかんだ

代表取締役社長 矢野 宙司(ひろし)

株式会社やのまん 代表取締役社長 矢野宙司(やのひろし)氏。2013年に勤めていた会社を退職して父親の経営する「株式会社やのまん」に入社。専務取締役を務めた後、5年後に代表権を承継。

事業の内容を詳しく教えてください

ジグソーパズルの製造・販売がメインの事業です。もともと祖父母が始めた会社で、最初は日本製の雑貨を海外に輸出していました。その後、おもちゃの輸出・輸入を経て日本初のジグソーパズル製造・販売をスタート。パズルを壁に飾るための額縁も国内に先駆けてリリース。その後はテレビゲームやフィギュアなどを製造・販売していた時期もありました。キャラクター花札(花あそび)やキャラクターグッズやボードゲーム、ミニチュアホビー、球体パズルやランプシェードパズルなどユニークな商品を多数展開しています。
一番の売れ筋商品はオーソドックスなジグソーパズルです。特にこの数年は「巣ごもり需要」により、ジグソーパズルの市場が拡大したと認識しています。細かい作業に没頭するため、脳トレやストレス解消にも効果があるそうです。取引先は玩具店向けの卸商社が大半ですが、最近はECでの販売も増えてきました。

公社に相談する前の経営状況を教えてください

2013年に母(前社長夫人)が亡くなり、心労のせいか父も体調を崩してしまいました。市況も悪く、部署同士の連携不足が売上や利益にも影響を及ぼし、社員全体が、自社や製品に自信を失っていきました。
私は当時、食品包装資材の専門商社に勤めていました。就職して3年目くらいの頃、父に「うちの会社を手伝おうか?」と言った時は「外の会社で出世できるなら、その方がいい」と断られたのです。父も二代目社長として苦労したので、違う道を歩んでほしかったのかもしれません。しかし、母が亡くなってから父と話す機会が増え、自然と「やっぱり手伝いたい」と思いました。

公社に相談した経緯を教えてください

2013年に勤めていた会社を退職して当社に入社しました。2015年に父からのすすめで公社の事業承継塾を受講しました。事業承継塾では、自社の理念や強み・弱みを分析することで自社への理解を深められました。一緒に受講した参加者とも交流を深め、今でも情報を交換しています。
受講後に、公社のパンフレットで見た東京ビジネスデザインアワードに応募し受賞。また、ECを強化するためオンライン販路開拓の支援も受けました。2016年に専務取締役に就任し、2017年に再度ご相談しました。事業の今後の方向性をどうまとめるか、その方向性を社内にどうやって共有するかが当時の課題でした。

同氏が専務取締役の頃に公社へ相談。当初から同氏が窓口で、相談内容は、事業承継面では株の移転が、経営面では売上・利益の低下による事業計画の見直しという明確なものだった。まずは来期の経営計画策定と、それをベースにした中期経営計画策定に取り組んだ。

公社には2度にわたって相談しましたが、当初は主に事業計画の立て方についてアドバイスをいただきました。事業承継塾で教わったように、まずは自社の理念や強み・弱みをしっかりと分析し、そこから課題を抽出、事業計画に落とし込むところまで支援していただきました。当時はまだ専務でしたが、社内への経営方針発表は私が担当。分かりやすく具体的な方針を打ち出すことで、社員の結束と安心を図りました。

事業承継の後、会社はどのように変化しましたか?

ご支援から1年半が経った頃、父が体調を崩したため予定より早く私が社長に就任しました。それまでも経営には関わっていましたが、どこかで「最終決定は父に委ねられる」という安心感があったのだと思います。それがなくなって、自分で判断しなければならないことに不安はありました。
再度相談したときは私だけでなく、幹部候補の社員も参加してもらいました。経営意識を根付かせ、体制を強くするのが狙いでした。この時は売り上げを作るための進捗管理がメインの相談内容でした。予定材料とKPI、コストなどを一覧で可視化する「ブースト計画表」を共有いただき、2021年に導入しました。その後も現場でブラッシュアップし、営業

最近はジグソーパズルの販売が好調だという。特に大人のユーザーが増えているそうだ。ただし、子供の頃に楽しんだジグソーパズルも、大人になると、売られている玩具店に行く機会がない。そういう方にリーチする方法として有効なのがECだ。売上増の主な要因はECサイトだと話す。

の行動を定量化しています。それまでは、営業活動をベテランの経験知に任せている部分もありました。そこを客観化・数値化することで「これから何をすべきか」が明確になったと思います。
そして、社員のマインドセットですね。幅広い商品を展開していましたが、まずはジグソーパズルの魅力を信じよう、自社の主力商品に自信を持って売っていこうという話をしました。そういう風土ができてきたところに「巣ごもり需要」が来たので、上手くチャンスをつかめたのだと思います。この数年の売上・利益は大きく上昇しました。

今後の展望をお聞かせください

「巣ごもり需要」により初めてジグソーパズルに触れた、あるいは子どもの頃以来久々に触れたという方も多いと思います。最初にも申し上げましたが、パズルに没頭すると余計なことを考えずに済むので、ストレス解消にもなるのです。子どもの頃には気づかなかった、そういう体験価値をもっと多くの方に知っていただけたら嬉しいです。
当社へのお問い合わせで多いのが、「ジグソーパズルをやってみたいけど、どこで販売しているのか分からない」というものです。大人になると、ジグソーパズルが売られている玩具店には行く機会がなく、なかなか目に触れないのでしょう。そういう方にリーチする方法としては、やはりECが有効だと思います。公社の支援もあり、私が専務になった頃より、売上が年々3倍から5倍へと拡大しています。今後も公社に相談しながら、さらに大きな販売チャネルとして育てていきたいですね。

information
事業内容 ジグソーパズルと額縁、カードゲーム、及び雑貨等の企画・開発・製造(制作)・販売
創業 1954年1月
資本金 9,000万円
住所 東京都台東区蔵前2-6-4マスダヤビル7F