情報提供
2022.05.09 事業承継税制の活用
事業承継税制とは
事業承継にあたっては後継者に株式や事業用資産を移譲する必要があり、その際に贈与税や相続税が発生します。しかし、中小企業の事業承継を円滑に進めるため、一定の条件を満たすことで納税の猶予や免除が可能になる制度が設けられています。これが事業承継税制です。
事業承継税制を活用するには、その企業が円滑化法(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)の認定を受けている必要があります。後継者がその企業の非上場株式などを譲り受け、または相続した場合の贈与税・相続税の納税が猶予されるほか、将来また別の後継者に会社を引き継ぐ場合には、猶予されていた贈与税・相続税の納付が免除されます。
さらに、2018年度の税制改正では、既存の事業承継税制に加えて10年間の特例措置が創設されました。既存の制度では納税猶予の対象となる非上場株式が総株式数の3分の2までと定められていましたが、この制限を撤廃。さらに、納税猶予割合が80%から100%に引き上げられています。
円滑化法の認定
事業承継税制は、円滑化法の創設とともに措置されました。事業承継税制を活用するには円滑化法の認定が必要になるなど、両者には密接な関係があります。
円滑化法の認定を受けるには、先代経営者、後継者、対象会社などに関するさまざまな要件があります。先代経営者に関しては贈与時までに代表者を退任することや筆頭株主であったことなど、後継者に関しては20歳以上で役員就任から3年以上経過していることなど、対象会社に関しては中小企業であること、上場していないことなどが求められます。
また、事業の継続に関しても要件があるため、認定後も1年ごとに都道府県への「年次報告」を提出する必要があります。年次報告以外にも、後継者の死亡や会社の合併、株式交換などの場合にはそれぞれ臨時報告の必要があります。
円滑化法の認定を受けると、事業承継税制を利用できるだけでなく資金の融資支援や相続における遺留分の特例適用、所在不明株主に関する会社法の特例適用などが可能になります。自社の状況に応じて、適宜活用しましょう。
制度スケジュール
事業承継税制の特例措置は2018年から10年間の期間限定。制度を活用するには、2024年3月までに特例承継計画を都道府県に提出し、2027年12月までに承継を実施する必要があります。(2022年3月現在)
特定承継計画の申請書には後継者の氏名や株式移譲の時期、株式承継後5年間の経営計画を記載しなければなりません。事業承継計画ほど詳細な内容でなくても構いませんが、早めに計画を立てておいた方がいいでしょう。
最新の内容を確認
特例措置の申請期限は、2023年3月から2024年3月に延長されています。今後も申請期限が延長される可能性がありますので、東京都中小企業振興公社や税理士などに最新の情報をご確認ください。
公社による支援と、その他の相談先
東京都中小企業振興公社では、事業承継に関する様々な支援を行っています。豊富な支援経験を有する専門スタッフが、会社ごとの状況に合わせた事業承継・経営改善を無料で支援。事業承継の基礎から学べるセミナーも開催しているほか、事業承継税制についての最新情報もお知らせしています。
その他、商工会議所や事業引継ぎ支援センター、よろず支援拠点、金融機関、士業専門家が参画する「事業承継ネットワーク」や、「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」にも相談窓口があります。また、提携している税理士がいれば専門的なサポートを受けられますので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。