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2022.05.09 事業承継計画の作り方

事業承継計画とは

日本の企業経営者の平均年齢は62.49歳(2020年、東京商工リサーチ)。対して、引退予想平均年齢は67~70歳と言われています。そのため、今後5年・10年の経営計画を立てる際には事業承継も視野に入れる必要が出てくるでしょう。

事業承継計画は、中長期経営計画に事業承継のスケジュールを組み込んだもので作っていくとよいでしょう。
年次の売上高や経常利益の目標と並行して、後継者の選定と教育をいつから始めるか、経営権や株式の譲渡をどのようなペースで進めるかといった計画を盛り込みます。

なお、計画の立案においては、企業の現状や事業承継に関わる自社の課題を明確にし、後継者や親族、取引先、従業員、金融機関との関係も考慮する必要があります。

事業承継計画の必要性

計画的な事業承継は、円滑に事業を引き継ぐために必要不可欠です。計画的に事業承継を行わないと、経営権や株式の移譲がスムーズにできないばかりではなく、最悪の場合は廃業という可能性もあります。
たとえば、高齢の経営者が実権を握り、後継者への経営移譲が進まない場合。一般的に判断力は年齢とともに衰えていくため、経営上の判断も難しくなっていきます。実際に、経営者の年齢と業績の関連性を示唆するデータもあります。経営者が30代以下の企業は54.23%が増収しているのに対し、経営者が70代以上の企業では増収が39.22%。さらに経営者が70代以上の企業では「赤字」や「連続赤字」の割合が全年代で最も高くなっています(2020年、東京商工リサーチ)。

また、株式や事業用資金、不動産などをどう移譲するかを決めておかなければなりません。計画しないまま、もし経営者が他界した場合、経営に関与していない親族に株式や不動産が渡ってしまい、経営権や、事業に必要な資産が散逸してしまう可能性もあるのです。

廃業となると、従業員や取引先にも大きな影響が及びます。将来的にも安定して事業を継続するため、早い段階から事業承継計画を策定しましょう。

出典:日本政策金融公庫
「中小企業経営者のための事業承継対策(令和元年度版)」(中小企業基盤整備機構)を加工して作成

事業承継計画の活用法

策定した事業承継計画には、税制優遇や融資申請など、さまざまな用途があります。自社の状況に応じて、事業承継計画を活用しながら承継をスムーズに進めましょう。

(1)事業承継税制の適用
相続税や贈与税の納税が猶予または免除される「事業承継税制」特例措置の適用を受けるためには、「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。「特例承継計画」には後継者や承継時期、承継後5年間の経営計画などを記載する必要があるため、先に事業承継計画を策定しておけばスムーズに進められるでしょう。「特例承継計画」の作成にあたっては、東京都中小企業振興公社や専門家と相談しながら進めるとよりスムーズです。

(2)東京都中小企業制度融資の適用
東京都では、中小企業の事業承継にあたって上限2億8000万円の融資制度を設けています。この制度を利用する際にも、事業承継計画が必要になる場合があります。

(3)社内外への説明資料として
経営者が高齢になると、社内の役員や親族、取引先や金融機関にも不安を与えてしまいます。事業承継計画を提示して説明することで、将来的な安心感を与えることができます。

計画策定のポイント

事業承継計画を策定するには、まず「現状の把握」が必要です。自社の経営資源や課題、後継者や相続についての問題を確認しましょう。

■現状把握のチェックポイント
□経営資源
・従業員の総数と年齢層別の人数
・自社の資産と負債
・キャッシュフローの現状と将来予測
□経営課題
・自社事業の3C分析
・社会全体と業界の景況
・自社の競争力や懸念点
□経営者の所有する事業用資産
・自社株式の保有状況
・個人名義の事業用不動産
・経営者の負債、個人保証
□後継者選定
・後継者候補は決まっているか
・未定ならどうやって選ぶか
・後継者候補の能力や適性、経営への意欲
・企業理念や経営方針の共有状況
□相続問題
・相続財産の総額、相続税額、納税方法
・後継者以外の法定相続人の有無、相互の人間関係
・株式保有状況

現状を把握し、課題や決定すべき事項を確認したら将来の展望を策定します。自社を今後どのように成長させていくのかという数値目標と併せて、事業承継のスケジュールや活用できる支援策なども検討しましょう。

■将来の展望のチェックポイント
□中長期経営計画
・自社の現状に基づいた中長期的な経営ビジョン
・売上高や経常利益の目標金額
・目標達成に向けた具体的な行動計画
□事業承継のスケジュール
・後継者の選定(親族か、社員か、社外か)
・後継者の教育
・経営権の移譲
・株式や経営資産の移譲
□活用できる支援策
・経営承継円滑化法による相続税や贈与税の納税猶予制度
・民法特例や金融支援策
・事業用資産を後継者に集中させるための遺言書
・株式分散を防ぐ定款の「譲渡制限」「相続人に対する売渡請求」規定

公社による支援と、その他の相談先

東京都中小企業振興公社では、事業承継に関する様々な支援を行っています。豊富な支援経験を有する専門スタッフが、会社ごとの状況に合わせた事業承継・経営改善を無料で支援。事業承継の基礎から学べるセミナーも開催しています。

その他、商工会議所や事業引継ぎ支援センター、よろず支援拠点、金融機関、士業専門家が参画する「事業承継ネットワーク」や、「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」にも相談窓口があります。さらに、「日本政策金融公庫」では事業承継計画を進めるために必要な資金の融資も行っています。もちろん、提携している弁護士や税理士などがいれば、それぞれの専門分野でサポートを受けられますので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。


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