2021.03.24

売り手と買い手 – 両者にメリットがあるM&A

中小企業の3分の2ほどが後継者不在と言われており、これからの日本社会全体の深刻な問題となっています。親族、役員や従業員から適性のある後継者を見つけることができない企業は多いということです。後継者不在の場合、経営者が真っ先に考えるのは「廃業」という選択肢です。しかし廃業すれば、従業員の雇用、取引先との関係、これまで培ってきた技術やノウハウなどの貴重な財産は全て失われてしまうことになるのです。そこで経営者の皆さんが時間をかけて作り上げた事業を承継させるためにM&Aという選択肢について考えてみるのはいかがでしょうか?  

M&Aで事業承継することのメリット

日本ではM&Aが「敵対的な企業買収 = ハゲタカ」のようなイメージを持たれ、従業員に「申し訳ない」「後ろめたい」といった感覚があると言われることがありました。しかし近年では徐々にそうした印象が変わってきており、中小企業のM&Aの場合は特に売り手側と買い手側の双方が納得の上で行う友好的な買収がほとんどです。一緒に働いてきた従業員の雇用を維持できることもあり、事業承継の選択肢として否定的なものから肯定的なものへと移り変わっているのです。ではここで売り手側と買い手側のそれぞれにはどんなメリットがあるのか考えてみましょう。

売り手側のメリット

  • 後継者を親族や社内の人材に限定する必要がないため選択肢が広がる。企業の存続と後継者問題を同時に解決できる。
  • 従業員の雇用は維持され、会社の形態が守られることが多い。
  • 事業・販売などの販路の拡大が見込める。新たな取引先や顧客情報などの情報も得られる。
  • 売り手側の経営者は株式の売却により利益を得る。
  • 会社の債務に関係した経営者保証を解除できる可能性がある。

買い手側のメリット

  • 新規事業への参入が容易になる。
  • 高い技術を持つ従業員を確保できる。
  • 設備やアイデアや特許などの取得が可能になる。
  • 事業・販売などの販路の拡大が見込める。新たな取引先や顧客情報などの情報も得られる。
  • 会社の業績向上が見込め、将来性を発展させることができる。

買い手側と売り手側のメリット

売り手側はしっかりと事業承継ができる、買い手側は大きな可能性を得ることで、M&Aは双方にとってメリットがあるということがわかります。加えて東京都中小企業振興公社や事業引継ぎ支援センター等の公的機関のサポートも充実し、中小企業が事業承継の選択肢の一つとしてM&Aを検討できる環境が整ってきていることもメリットです。では効果的なM&Aを行うためにどんな点に留意できるでしょうか?

企業の「強み」を引き出し「磨き上げ」る

M&Aの市場が活性化され、売り手と買い手の双方にとってもメリットがあると理解できました。とはいえ「うちのような会社を買ってくれるところなんてないよ」と思っている中小企業経営者も多いのではないでしょうか? しかしこうした考え方を安易に持ってはいけません。あなたが中心なって成長してきた会社がこれまで存続してきたのは、それなりの理由、つまり「強み」というものが存在しているからでしょう。その「強み」を精査して「磨き上げ」ることで価値は何倍にもなります。「強み」があるなら、多くの経営者がマイナスに考える要因はそれほど問題にはならないのです。あなたが気づいていない自社の強みを整理するため、ここでは企業としてどんな「強み」を引き出し、磨き上げられるのかを考えてみましょう

1.優良な顧客を持っている

ある一定層に支持されている優良顧客を持っているというのは強みです。例えば自社の商品が若い世代に指示されていて、同業種の高齢の世代に支持されている企業を買収して販路を拡大するケースがあります。商品に対するレビュー、クレームも含め、顧客や商品に関する蓄積されたデータも大切です。時には創業何百年の老舗が手書きで記入した情報も買収の要因になることがあります。顧客情報をデータベース化するなどして使えるように整理して(磨き上げて)おくことが、M&Aにおける高額な買収につながります。

2.優良な取引先を持っている

買い手側が持ちたいと思っている優良取引先を抱えているということも強みになります。例えば高い技術力や商品力を持っているものの販売力は低いという会社が、買収した企業の優良取引先を使用して販売網を強化するというケースがあります。一部の地域で強いブランド力を持つ企業が、別の地域で高く評価された優良な取引先を持っている企業を買収する、数は少ないが全国的に取引先を持っている企業を買収して販路を拡大するということもあります。審査が厳しい優良取引先との企業間の取引口座を持っていることなども強みです。取引先が少ない、地域が限定的であるということをマイナス要因と考える経営者が多いですが、自社の取引先を今一度、整理しておくことで、思わぬ「強み」へと変化する可能性もあるのです。

3.シェア率

優良な顧客や取引先を持っていることとも関係しますが、一定の地域、一定の年齢層に支持されているなど、ある特定の条件において圧倒的なシェア率を誇る場合も強みになり得ます。経営者は「うちの商品は高齢者にしか売れていない」「一部の地域でしか販売していない」という事をウィークポイントとして見てしまいがちですが、それは他社からすれば自分が持っていない強みであることもあるのです。自分の会社に圧倒的なシェア率というものが存在しないかどうか、分析してみましょう。

4.従業員の技術力

経営者は従業員の持っている培った技術・経験・知識は強みになると考えているでしょう。しかしこの観点で考えたときに、従業員の高齢化というのがマイナス要因にはならないという考えまでには至りません。従業員は若い方が良いという固定概念があるからです。しかし創業年数がある程度の期間が経つのに対して従業員が若い人ばかりなら、従業員が数年で入れ替り、技術や経験の上積みができていないと判断されるかもしれません。経験豊富な従業員がいるということは創業新しい会社や若い世代で構成されている会社にとってはM&Aによって知識や技術力をしっかりと受け継ぐことができるメリットがあるのです。今のうちに自社の技術や経験や知識をしっかりと見える化(把握)しておきましょう。

5.特許

ある技術に関連した特許を取得している、特殊技術を持っている場合も強みになります。あなたの会社はある技術の特許を取得しているものの、それは顧客のニーズに応えた結果であり、儲けようと思って開発したわけではないかもしれません。その特許の他の利用価値を認識していないということもあります。ある企業にとってその特許は大変な価値があり、新たな開発のための期間やコストも大幅に削減できるため、高額な買収に至るというケースもあります。セキュリティやメンテナンスなどを考慮して開発の内政化を計り、特許を取得している企業を買収したいと考えるケースもあります。これまで自社がどんなものを開発し、どんな特許を持っているか、またその特許がどのように使用できるか(専用実施権になっていないか)など精査しておき、自社の「強み」を把握しておきましょう。

6.社風や従業員の一体感

誰でも従業員が明るく挨拶し、礼儀正しく接するのを見て、好印象を持つのではないでしょうか? 明るい雰囲気は教育によって生み出されることもありますが、表面的なものだけではなく普段から自分の意見や改善点などについて語りやすいなどの社風も関係することでしょう。従業員が自社の商品やサービスに愛着や自信を持ち、生き生きと語れるなら、顧客に安心感を与えられます。そのようにして従業員の自立性が芽生えると、経営者は従業員に対してある分野で必要な権限譲渡を行い、その分野においてリーダーシップを発揮できる従業員を育て安くなります。こうすることで経営者が交代しても従業員の一体感は残りやすくなり、買い手側は求心力が失われてしまうという怖れを回避できます。M&A後にも、こういう雰囲気の会社となら一緒にやっていけるという安心感は強みになるでしょう。

企業としての「強み」

企業としての「強み」を見える化することの大切さ

ここで取り上げた点はお金で勘定できないものです。あなたの会社の顧客・取引先などの人脈、従業員などの人材、さらには高い技術力、社風など、自社の強みを分析して見える化しておきましょう。経営者は売れない理由として「売り上げが少ない」「会社が田舎にあり、営業エリアも狭い」「これといった特徴もない」「事業に将来性がない」「うちのような小さな会社はどこも相手にしてくれな」「赤字経営が続いている」などを上げますが、買い手側にとってそれに勝る利点があると、上述した点はさほど問題にならないのです。 一方でM&Aには「条件に合った相手先を見つけるのが難しい」「M&Aを考えている事が周囲に漏れると計画が失敗する可能性がある」などといった留意するべき点もあります。メリットと留意点をバランスよく見極めながら、事業承継の選択肢としてM&Aを検討してみるのはいかがでしょうか?

 

東京都中小企業公社ではM&Aによる事業承継や企業を磨き上げる支援も無料でサポートしていますので、気軽にご相談いただければと思っております。

(C)2019 公益財団法人東京都中小企業振興公社 all rights reserved.
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